工作>DAC内蔵ヘッドフォンアンプ
はじめに
今まで製作してきたヘッドフォンアンプは据置が1台, ポータブルが2台でいずれもアナログ入力でした. 以前はiPodやiPhoneにおいてDock30ピン端子からアナログ信号出力をすることができましたが, 近年はそのような出力端子が設けられている機器は少なく, ポータブルアンプはDACを内蔵させることが求められるようになってきました.
そこで, 今回はDACを内蔵しより良いアンプを作ろうということで, 製作することにしました.
目標
今回製作するポータブルアンプの目標は以下の通りです.1. 小型化
製作するのは「ポータブル」アンプです. 持ち運びする機器が大きければ意味がありません. スマートフォンなどの再生機器と重ねてもあまりかさばらないサイズを目指します.
2. DAC内蔵
上にあげましたが, 近日のスマートフォン等の端末の規格に対応させ, より高音質を目指すためDACを内蔵します.
3. 単4電池を利用
オーディオ・アンプでは良く利用される「オペアンプ」ですが, オペアンプは動作電圧が高い場合が多く, 以前のポータブルアンプでは006P電池(アルカリの場合9V, ニッケル水素の場合8.4V)を利用してきました. しかし, この電池は高い電圧が得られるものの, 容量の観点からすぐに電池がなくなってしまうという問題が発生します.
ここで, 今回は単4電池を2本(アルカリの場合3V, ニッケル水素の場合2.4V)で駆動させます. 低電圧駆動回路と低消費電力化が必要となります.
回路
アンプ部
回路は nabeの雑記帳 などのサイトに詳しく解説がされている, ダイヤモンドバッファ回路を用いて回路を組み立てることとしました.
オペアンプは低電圧が駆動でき, かつ出力可能電圧が有効に活用できる「フルスイングオペアンプ」(別名:レールツーレールオペアンプ)を利用します.
DAC部
個人で製作するにあたり, 利便性の高いユニバーサル基板ではDACなどのようなSSOP28ピンを利用するDACチップなどを取り扱うことは非常に難しいです. (DIP変換基板を利用する手はありますが, 多くのスペースを占領してしまいます.) そこで, 今回DAC部に関しては市販されている基板を流用することとしました.
電源
アンプ部とDAC部では電源を分けています. 理由としては, DACを駆動させるための5Vを電池の電圧から生み出すのは難しい(可能ではあるが)ということ, しかし接続するUSB電源からすべて使ってしまうと消費電力の多さに耐えられない(特にスマートフォンなどの場合)ということや, 仮に動いたとしても音質が良くないであろうという観点より,
- アンプ部は電池(単4x2)
- DAC部はUSB電源(5V)
としました.
部品リスト
☆準備中☆
製作の様子
トランジスタの選別
当回路は前に上げた通り「フルスイングオペアンプ」を利用するとありますが, トランジスタ同士でオフセット電圧を打ち消し合い制御している当回路では, Vbeのずれが無駄な電流の増加につながり, そこで発生する熱によって更にVbeが増加という悪循環をループしてしまう「熱暴走」という事象が発生してしまう可能性があります.
ここて, トランジスタのhFE(交流電流増幅率)やVbeをモニターできる「hFE測定器」を自作しました. 当アンプはこの測定器で選別したものを採用して組み込んでいます.
※後日記事を作成します
画像
各部説明
左から
- 電源スイッチ
- LED(電源ランプ)
- 入力端子(mini-USB)
- 出力端子(3.5mmステレオ)
- ボリューム
使用方法
音楽の再生
使用方法は以下の通りです.
- USBケーブルを再生機器と接続
- ヘッドフォンなどを3.5mmジャックに接続
- 電源スイッチをON
- 再生機器で音楽を再生
- ボリューム調整
Androidスマートフォン(XPERIA SP)との接続の様子を以下に示します.
対応機器
以下の機器で再生を確認しています.
- Windows7/8/8.1
- Ubuntu14.10
- Android4.2(XPERIA UL), 4.3(XPERIA SP)
AndroidにおいてはOTGケーブルを利用します. なお, Nexus7では再生を確認することができませんでした. PCM2704Cを搭載しているので, 上記記載以外でも多くの機器で利用することができると思われます.
電池交換時
- 2本のネジを取り外す
- 電池ボックスを引き抜く
- 電池交換を行う
スペック
スペック表を示します.入力 | mini-USB(Bメス) |
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出力 | 3.5mmステレオ |
電源 | 単4型電池2本 |
質量 | 184g |
サイズ(WxDxH) | 70x114x20mm |
製作費 | 約7500円 |
消費電流は約80mAで, ニッケル水素電池(エネループ)を利用する際は約10時間持つこととなります. (使い方によりますが, 毎日の電車内での利用で1週間は持ちます.)
おわりに
手軽に高音質な音楽再生ができるため, 室内外問わず利用頻度が非常に高いです. 今後もより良いヘッドフォンアンプを作っていこうと思います.