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はじめに
数あるエフェクターの中で, 「モジュレーション」系で有名なコーラスエフェクターを作っていきます.
トランジスタ技術Jr.(隔月発行・学生無料)の2015年5・6月号にコーラスの説明と回路図が掲載されていたので, 基本的にはその回路を利用して組んでいきます.
このページでは回路の説明等は詳しくしませんが, 実際に組み込むにあたりどのような部品を選んだら良いか, 基板レイアウトや組み込みはどうすればよいかについてを記載していきます.
回路について
コーラスを発生させるために, この回路では「PT2399」という業界では定番らしいディジタル専用IC(ディレイ用)を採用しています. 5Vの電源を供給し, PT2399の[(入力)→フィルタ→ADコンバータ→メモリ→DAコンバータ→フィルタ→(出力)]という構成に発振回路を組み合わせる(VCOを経由)と変調音が出力されるという専用ICです.
紙面に記載されているものなのでここで回路図を記載することはできませんが, トランジスタ技術2015年5月号を購入することで入手可能です.
トランジスタ技術2015年5月号
部品選定
利用する部品を以下に記載します. なお, 以下の部品はすべて秋葉原の電子部品ショップで入手可能です.
記号の部分は回路図の部品記号(C1とか)を記載しています. 価格は単価計算です.
部品 | 参考 | 備考 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 値 | 個 | 記号 | 販売店 | 通販コード | 単価[円] | 計[円] | |
コンデンサ | 470pF | 1 | C13 | 秋月 | P-08110 | 10 | 10 | 回路図では560pF指定 |
1000pF | 1 | C8 | P-07673 | 10 | 10 | |||
4700pF | 1 | C15 | P-05180 | 10 | 10 | 回路図では5600pF指定 | ||
0.01uF | 1 | C12 | P-05327 | 10 | 10 | |||
0.1uF | 5 | C1,3,4,5,9 | P-05332 | 10 | 50 | |||
10 | ※後述 | P-04679 | 1 | 10 | 2012サイズ | |||
0.22uF | 1 | C2 | P-07511 | 15 | 15 | |||
電解コンデンサ | 10uF | 2 | C6,10 | 秋月 | P-08377 | 10 | 20 | ニチコンMW |
47uF | 2 | C19,24 | P-08379 | 20 | 40 | |||
100uF | 2 | C22,23 | P-08376 | 20 | 40 | |||
抵抗 | 1kΩ | 2 | R4,8 | 秋月 | 1/4W品 | 1 | 2 | ※後述 |
2.7kΩ | 1 | R13 | 1 | 1 | ||||
4.7kΩ | 1 | (LED用) | 1 | 1 | ||||
5.1kΩ | 1 | R22 | 1 | 1 | ||||
10kΩ | 7 | ※後述 | 1 | 7 | ||||
15kΩ | 2 | R15,19 | 1 | 2 | ||||
22kΩ | 1 | R17 | 1 | 1 | ||||
51kΩ | 1 | R18 | 1 | 1 | ||||
100kΩ | 2 | R5,10 | 1 | 2 | ||||
330kΩ | 1 | R21 | 1 | 1 | ||||
510kΩ | 1 | R6 | 1 | 1 | ||||
1MΩ | 1 | R9 | 1 | 1 | ||||
可変抵抗 | 100kΩ(A) | 2 | R14,20 | 秋月 | P-00243 | 40 | 80 | |
トランジスタ | 2SC1815Y | 1 | Tr1 | 秋月 | I-04268 | 8 | 8 | 回路図では2N3904指定 |
オペアンプ | NJM072BD | 2 | IC1,2 | 秋月 | I-09178 | 50 | 100 | |
専用IC | PT2399 | 1 | IC3 | マルツ | 111097 | 281 | 281 | |
タイマIC | NE555P | 1 | IC4 | 秋月 | I-08344 | 30 | 30 | |
レギュレータ | 5V | 1 | IC5 | 秋月 | I-08973 | 20 | 20 | |
LED | 5mm高輝度 | 1 | 秋月 | I-06405 | 20 | 20 | ||
ICソケット | DIP8ピン | 3 | IC1,2,4 | 秋月 | P-00035 | 15 | 45 | 丸ピン |
DIP16ピン | 1 | IC3 | P-00029 | 20 | 20 | |||
基板 | Cサイズ | 1 | 秋月 | P-00517 | 60 | 60 | 72x47.5mm | |
XHハウジング | XHP-2 | 1 | 千石 | 7AN6-5SFL | 10 | 10 | ||
XHポスト | B2B-XH-A | 1 | 千石 | 5AG6-8BM4 | 20 | 20 | ストレート | |
XHコンタクト | BXH-001T | 2 | 千石 | 2AR6-5SFL | 6 | 12 | AWG22-28用 | |
つまみ | φ16 | 2 | R14,20 | 秋月 | P-00253 | 20 | 40 | |
DCジャック | 2.1mm | 1 | 秋月 | C-06342 | 60 | 60 | ||
標準ジャック | 6.3mm | 2 | J1,2 | 秋月 | C-06762 | 70 | 140 | |
スイッチ | 3PDT | 1 | 千石 | 4AZC-LLJ8 | 700 | 700 | オルタネイト9P | |
ケース | 1550BBK | 1 | マルツ | 70970 | 1382 | 1382 | 30×115×64mm | |
ゴム足 | B-P41 | 4 | 千石 | 82XA-3BKZ | 10 | 42 | φ11x3.5mm |
合計: 3306円 (※WEBと店頭で価格が違う場合があります)
※0.1uFの記号番号: C7,11,14,16,17,18,20,21,27,28
※10kΩの記号番号: R1,2,3,7,11,12,16
※抵抗について: バラで購入したい場合は千石電商(単価5円)がおすすめ
手持ちの部品の都合上, LED用の抵抗値を4.7kΩで指定しましたが, LED用なので5.1kΩなどでも構いません. (近い値であれば, 明るさの変化はほとんどありません) また, 0.1uFコンデンサはバイパスなどに利用する部分を省スペース化の意味も込めてチップコンデンサ(2012サイズ)に指定しています. この大きさはユニバーサル基板等でも比較的利用しやすいサイズですが, ハンダ付けに自信が無い方などはラジアルリード品でも構いません.
この他, 配線材が必要となります. 私はベルデンの8503(AWG22)を利用します. 配線は手持ちですが, 共立エレショップで安く手に入れることができました. 秋葉原ではオヤイデ電気で販売されているのを確認しています.
回路図
基板部の回路はトランジスタ技術Jr.のものに準拠し, 値は上に示す表の通りです. ただし, あの記事は組み込み用途としては意識されていないので, 私の方では組み込み時の回路図を記載します. なお, これはコーラスエフェクターのみならず, その他のエフェクターでも同様です.
スイッチは3PDT品(部品リストにあるものなど)を利用し, スイッチが上向きの時は入力信号がそのまま出力に流れます. そこで, スイッチが下向きになると, 基板に信号が入力されて出力も同様に基板とつながり, 同時にLEDもつながるため点灯するというものです.
プラグをさした時のみ通電するよう, 入力または出力プラグのRホット端子に基板のGNDをつなげる方法もあり, 内蔵電池を利用する場合は確かにその方法でないと無駄に消耗してしまいますが, 今回は外部電源を想定しているので直接落としています. 比較をしているわけではありませんが, おそらく直接GNDに落としたほうが音質は良いでしょう.
実装図
表面と裏面の2枚を紹介します. 画像部分をクリックするとPDFが表示されます. ユニバーサル基板向けのCADを用いていない(Eagleを利用)ので, 基板穴は表示されていません. 寸法表記はインチで, 基板は部品リストにある秋月Cタイプを想定しています. チップコンデンサを裏面に実装する設計となっています.
なお, 設計段階ではXHコネクタを利用できるように配置(下図L型ピンヘッダの部分)しましたが, 最終的には取り外しています.
表裏両方が記載されたPDFは こちら
基板上の端子は表面から見て上の通りです.
製作記
部品購入
部品はすべて秋葉原で購入. 部品のリストのとおりです. (XHコネクタが写っておりますが, 結局はストレート型2Pを1セット使うこととなりました.)
実装図作成
上に示す実装図を作成しました. L型のXHコネクタをつけられるように設計しましたが, 結局の所取り外したので, もう少し余裕が持てたかもしれません.
いつもやっていることですが, Eagleで作成した図面は表裏が両方印刷されたものと, 表と裏を両面印刷する2枚を用意しています. ぱっと見で確認するときは両面がわかるような片面印刷のほうが良いですが, ごちゃごちゃしてしまうので片面ずつのものもあると良いです.
基板作成
場所配置がわかりにくいので, 背が高いですが優先的にICソケットを取り付けました.
とりあえずオペアンプは手持ち品を使うため, SOP変換基板を利用. いずれ指定のTL072に買えるかもしれません. なお, 左上は正しくはDIP8ピンのIC555が取り付けられます.
外側作成
基板が完成したところで, ケース加工をしていきます. 私の中では定番の1550BBK(マルツパーツ館発売)
LED穴としてドリルを4.5mmを貫通, 4.8mmを途中まで開けて接着剤を使わずに固定できるようにしました.
手持ちのドリルが6.5mmなので, 途中からはリーマーを使って穴を広げていきました.
可変抵抗はパーツ自体の回転を防ぐための穴をあけました.
長いので金ノコ&金ヤスリで削りました. このような場合はケガキ線が書きにくいのでマスキングテープを巻くとわかりやすいです.
すべての部品が取り付け終わりました.
配線
基板を合わせてみたところ, プラグを入れた状態でも問題がなかった...ように見えましたがXHはコネクタがかぶっていることが確認. しかし, 基板の位置をうごかすとプラグに干渉するので,XHコネクタは取り外す方向としました.
前方の配線は直接ハンダ付けしました. 後方はメンテナンス性向上として, クルマのボンネットのように基板にアクセスできかつ配線を短く済ませるよう, XHコネクタ(ストレートに変更)を採用しました.
基板をかぶせてみたところ, 問題ないことを確認. 裏フタを取り付けて完成です.
自作エフェクターも増え, 3台となりました. 各エフェクターのリンクは こちら から
おわりに
面白いエフェクターができあがりました. これといった使いどころはわかりませんが, 遊び道具としては良さそうです. 私はベースで利用していますが, どうやら低域で大きく減衰してしまうようで, これを通すとかなり力が弱い音になってしまいました. (音域が高いギターなら良いのだと思います)
ベースでも組み合わせて遊べるよう, ひよこのページ さんのBASSスルーを作ってみようかと検討しています.